ヘラクレスオオカブトの仲間の飼育

Dynastes hercules ssp.

この記事を書いた隊士:ι(iota)

 

 

 

外国産カブトムシの中で最も人気であるカブトムシの一種であり

カブトムシ、クワガタファンでない方でもヘラクレスオオカブトといえば

ピンと来る方も多くいらっしゃると思います。

そんなヘラクレスですが近頃では飼育用品などが充実しており

最低限の飼育知識と環境さえあれば意外と簡単に飼育出来てしまいます。

   

『ヘラクレスオオカブト、昔から憧れで…でも大きいし難しそう…』

   

そのような方のために

私なりに簡単に説明や飼育を綴ってみました。

 

とても楽しい!ワクワクする!

昆虫飼育の世界への一歩のお手伝いが出来たら幸いです。

 

 

⦁ヘラクレスオオカブトの仲間について

 

主に南米に生息している大型の昆虫で、様々な亜種に分かれております。

亜種によって形状が変わりどれもかっこいいです。

流通している亜種を少しだけご紹介します。

 

ヘラクレス ヘラクレス(原名亜種)

生息地 グァドループ諸島、ドミニカ連邦

1番入手できる機会がある種類です。

太くなる血統、特に大型になる血統は高価で人気です。

 

ヘラクレス リッキー

生息地 ベネズエラ コロンビア エクアドル ペルー

ヘラクレス最大亜種です。

頭角が鍵のように平たくなるのが特徴です。

流通しているのは主にコロンビア産、エクアドル産になります。

 

有名な二種を代表として挙げてみました。その他の亜種も

 オキシデンタリス

 エクアトリアヌス

 パスコアリ

 セプテントリオナリス

 ブリュゼニ

 モリシマイ

 タカクワイ

 トリニダーデンシス

 レイディ

 トゥクストラエンシス(生体での流通は見たことないです)

 

と様々な亜種が確認されており、コレクション性も高いです。

 

以下飼育方法は飼育種をもっとも入手しやすく強靭な原名亜種、リッキーとし

添加物やシビアな温度管理などを除いた簡易的な飼育方法をご紹介したいとおもいます。

 

 

 

⦁生体の入手 

*幼虫から飼育される場合は「幼虫~蛹まで」からご覧ください。

 

 

人気な種なだけあり、市場の流通数も多いので

お気に入りの個体を購入してみてください。

成虫の足などの欠損がなく、力強く威嚇してくる個体を選んでください。

可能であればオスメスの羽化時期の差が1ヶ月以内のものが好ましいです。

 

余談ですが

ショップ様や即売会で手にとって見たい際には必ず店員の方に一言断ってからにしましょう。

 

 

⦁ペアリング

 

ペアリング(交尾)についてです。

オスメス共に後食(活動)後1ヶ月ほど経っている個体が好ましいです。

あまりに早くペアリングさせると、体内の生殖機能が未発達のままペアリングさせてる可能性があり、遺伝子の受け渡しが失敗する場合が高くなり

結果、メスは無精卵を多く産卵してしまい、急死や短命に繋がります。

オスメス共に半年くらいは生きるので、焦らず、よく観察してからペアリングを行うことがブリードの成功に繋がると思います。

目安として、オスメス共に餌がなくなると暴れて飛び回る行動が確認できれば大丈夫だと思います。

 

足がかりになるような場所(発泡スチロール、木材の樹皮、園芸用鉢底ネット、人工芝など)にメスをうつし、メスの上翅にオスの触覚があたるように乗せます。

オスは触覚を動かしてメスと確認できれば、交尾に移ります。[図1]

40-60分ほどで終わります。

 

[図1]ヘラクレス リッキーのペアリング

 

 

交尾を終えた個体に与える餌は栄養補給のため高タンパクゼリー又はバナナが最適です。餌を切らさないように栄養補給をさせてる間に産卵セットの準備をします。

個人的な意見ですが、産卵前にバナナを食べさせた場合は産卵数が増え、メスが弱ることなく、フセツも欠けにくく、長期間産卵しているような気がします。

できることならカブトムシにはバナナが特にオススメです!

 

 

⦁産卵セット

産卵セットを作ります。[図2]

 

・産卵ケース(コバエシャッター中以上のもの)

・カブトマット(完熟タイプ)

・転倒防止材(止まり木や園芸用鉢底ネットなど)

・昆虫ゼリーもしくはバナナ

 

をご用意してください。

 

まずはマットの調整から行います。

大型のタライやボウルなどを使用されるとマットを撹拌しやすいです。

マットですがグローバル大阪様 beetleマットなど完熟系の粘り気のあるマットが適しています。

昆虫に有害なガスなどが発生している場合がありますので、衣装ケースなどに取り出して撹拌し刺激臭などがなくなるまで、空気に触れさせ、ガスを抜いてください。だいたい1.2日で抜けると思います。

 

ガスが抜けて土の匂いに変わりましたら、水分を調節を行います。

目安は、マットを手で握るとだんごになり崩れない程度 が最適です。

手でにぎって水分が滴らない適度な水分量で、混ぜ込んで行くと粘り気を感じるくらいがベストです。

 

水分調節が終わりましたら

それらをケースにうつし、詰めていきます。

ケースの下から10-14cm(目安としてメスの体調×2の深さ)くらいマットを詰めるのですが

2.3回に分けて詰めるとうまく詰められるかと思います。

 

マットを入れ、均一になるように左右にゆすり

床などにトントンと置いて慣らしてから強すぎず詰めていきます。

詰めた後指を差し込んでみて、多少力を入れて指の第一関節くらいまで刺さるくらいが丁度いいと思います。

あとは転倒防止材とゼリーを入れてメスを入れます。

管理温度を23-26℃がベストです。

 

[図2]産卵セットの図

 

 

セットし始めてから14日—20日ほどでひっくり返して採卵を行ってみるのも楽しいものです。[図3]

うまくいけば80-100ほど採れます。

50個を目標に挑戦してみましょう!

 

[図3]ヘラクレス リッキーの産卵

 

 

当方では割り出した卵は

カブトマットを入れたプリンカップで保管します。

入れたマットに上から直径5mm程の穴を上から深さ1-2cmで開け、

そこへ卵を落とし込み保管する方法を採用しております。[図4]

 

2週間くらいの頻度で採卵を2.3回行うくらいで

再度ペアリングをさせると産卵アップと受精卵を産む確率が高くなるのでオススメです。

 

[図4]上記の卵保管方法の例

 

 

落とし込みましたら、プリンカップの蓋の部分まで擦り切れにマットをふんわり入れ、フタをします。

大体1ヶ月ほどで孵化します。[図5]

 

[図5]ヘラクレス オキシデンタリスの初令幼虫

 

 

採卵が嫌だとお思いの方は

上記の産卵セットと全く同じものを複数つくってもらい、

 

2~3週間してメスがマットの上を徘徊していたら別のセットに移す、という方法もあります。

この場合のメリットは、採卵の際のショックをなくし、幼虫で割り出しができることです。

ただ、余計にマットなどの費用がかかってしまいます。

 

 

⦁幼虫~蛹まで

 

幼虫の孵化が始まったら個別に分けます。

あくまでも一例ですが

1令-2令初期(460ccプリンカップ)

2令後期-3令幼虫[図6]からは

オスの場合は4200ccタッパーへ

メスの場合は2300ccボトル で羽化までもっていくことが可能でした。

幼虫の餌はRush様レギュラーマットが

よく食べよく成長しコスパも良いのでオススメです。

 

マットの交換ですが、フンが目立ってきてマットが減ってきたらこうかんしてください。

目安としてだいたい2.3ヶ月に一度かと思います。

 

交換方法は

ボトルやタッパー内のマットとフンを全部取り出し

新しいマットをいれ、フンと一緒に幼虫を投入します。

幼虫は体の中でバクテリアを飼っており、そのバクテリアが

マットの分解を手助けしてくれているそうです。

フンの中にはバクテリアがたくさん付いており、そのため、フンごと幼虫を投入すると幼虫にとって住み良い環境となり、死亡率が格段に下がります。

 

 

幼虫期間は

オスは16-18ヶ月

メスは10-16ヶ月ほどの個体が多いです。

 

飼育温度は最低18℃、最高26℃が無難です。

 

[図6]ヘラクレス リッキーの3令幼虫

 

 

[図7]ドミニカ産ヘラクレス ヘラクレスの蛹

 

 

[図7]のように蛹室の上層部のみ綺麗に取り除いて観察するのも非常に楽しく、飼育の醍醐味の1つだと感じます。

蛹は独特の匂いがあるのでぜひ嗅いでみてください。

(慎重に行わないと蛹を傷つけかねないので自己責任でお願い致します。)

 

 

蛹を取り出して、園芸用オアシスをくり抜いて

人工蛹室をつくり羽化の過程を観察するのも非常に面白いです。[図8]

近頃では人工蛹室をつくる専用の型が販売されてますので

それらで作るのも良し、自分の手で蛹室を見ながら作るのも良しです。

また、スポンジ製の人工蛹室も販売されていますので、そちらを使用されるのも良しです。

 

[図8]人工蛹室に入れたヘラクレス リッキーの蛹

 

 

前蛹〜蛹〜羽化は体を作り変える繊細な時期なので

温度変化の少ない静かな暗い場所で保管してください。

 

管理温度は20℃以上24℃以下で全て羽化しました。

 

蛹になってから2ヶ月ほどで羽化します。

 

 

⦁羽化、その後の管理

 

羽化後は翅の色が黒から黄色に変わるまで

あまり触らずにそっとしておきましょう。

 

蛹室で管理する方が1番よいのですが

止むを得ず壊してしまった場合は

広葉樹の管理マットを厚くしき

加水したティッシュやキッチンペーパーを細長く整えて

成虫の足がかりにし、乾燥に気をつけながら温度変化の少ない場所で保管しましょう。

 

翅の色が黄色に変化していたら触っても大丈夫です。[図9]

 

羽化後3ヶ月ほど経ち

ティッシュが排泄物で汚れ、ボロボロになっていたらゼリーを与えてください。

1ヶ月ほどでペアリング可能となります。

 

[図9]ヘラクレス リッキーの新成虫

 

 

○最後に

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

こちらに書かせていただいた飼育方法はあくまでも

これなら手軽に簡単に飼育できるかな?という考えのもと

当方の飼育環境で飼育可能な一例としてご紹介させて頂きました。

勿論、他にも様々な飼育方法があります。

飼育者の手癖や飼育環境で方法も変わってくると感じておりますので

ご自身の手で探ってみて自慢のお気に入りの一匹を作出してみてください!